1) 後知恵バイアス(hindsight bias)のメカニズム
人は結果を知ったあとで、「そうなると分かっていた」と感じやすい。これは後知恵バイアスと呼ばれる心理現象だ。事前の不確実性やリスクを脳が無意識に切り捨て、起きた結果をあたかも予測可能だったかのように再構築する。
・起きた結果を「あたりまえ」に感じることで、自分の判断を過大評価し、安心感を得る
・失敗があれば「見落としていた」と言い訳でき、成功したら「自分の直感は正しかった」と自尊心が満たされる
脳内ではドーパミン報酬系が働き、「正しかった自分」に対して報酬を与える設計になっているため、後出しで当てはめるほど心理的に心地よいわけだ。
2) 責任回避としての結果論
結果論は批判回避の手段にもなる。組織やチームで決定を下したあと、うまくいかなかった場合に「だから言ったじゃん」という言葉を盾に、自らの責任を軽くできる。具体的には以下のような動きが見られる。
・失敗時の自己防衛:結果が悪いときは「最初から言っていた」と主張し、批判の矛先をずらす
・他人の提案として残す:会議資料や議事録に「◯◯さんが提案していた」と記録し、失敗の責任を分散する
組織風土としてこの行動が蔓延すると、誰も新しいアイデアやリスクを取らなくなり、安全圏から動けなくなる。結果論は手軽に「後付けの正しさ」を提供するが、同時に前向きな挑戦の芽を摘んでしまう甘い罠なのだ。
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