――ゴルフ接待は信者の洗礼式/宴席でのヨイショ十か条――
序 ことばより前に“空気”を読む
JTCでは仕事の成果よりも「上司からどう見えるか」が評価の通貨である。ここでは、褒め言葉は報告書より重く、沈黙はミスより罪深い。まずは“崇拝の基礎体力”を身に付けておかなければ、どれほど業績を上げても出世街道の扉は開かない。
◆ ゴルフ接待は信者の洗礼式
ゴルフ場は出世ゲームの教会だ。コースに入ることは洗礼を受けることに等しい。
● 早朝集合は忠誠心のタイムカード
スタート時間の一時間前には到着し、クラブハウス入口で上司を迎え撃つ。滞在時間の長さが信仰の深さを示す。
● スコアは「帳尻合わせ」が腕前
自分のパーより上司のパーを立てる。必要ならOBボールを「奇跡の発見」へとすり替える寛容さも求められる。
●「ナイスショット」は酸素
一打一打に称賛を送り続ける。語彙を尽くすことが肝要で、同じ誉め言葉を二度続ければ“機械的”とみなされ信頼残高が減る。
● 昼食は聞き役に徹する
ビールは上司より遅く、食事は上司より速く。語るのはゴルフの話題か上司の趣味だけ。自分の成功体験は禁忌。
● 18ホール後の風呂こそクライマックス
湯船での雑談は昇進面談と思え。仕事の相談を差し出すのではなく、上司の「悩み」を掘り起こし、共感で包む。
◆ 宴席でのヨイショ十か条
接待の場は“公開オーディション”。ここでの一言一句が年末評価に直結する。以下の十か条を暗唱せよ。
1 乾杯のグラスを上司より低く構え、目線は一段下げる
2 料理を取り分けるとき箸先を相手に向けない
3 上司の思い出話には「その続き、ぜひ」と再生ボタンを押す
4 酒量のペースは上司の七割に抑え、潰れるふりも潰させることも避ける
5 話題が途切れた瞬間はチャンス、「最近〇〇がお好きだとか」と情報ストックを投下
6 笑うタイミングは“半拍早く”が基本、誰より先に笑えば笑いは自分の手柄
7 部下の失敗談は「私の指導不足です」と引き取り、上司の寛大さを引き出す
8 自虐ネタは盛り過ぎ厳禁、哀れより尊敬を誘うさじ加減を意識
9 スマホは見えないところへ、通知音は上司の存在を軽んじる凶器
10 お開きの一言は「本日いちばん学びが多かった時間でした」、総括で感謝を三重に包む
終 崇拝は“演技”ではなく“制度”
ここで学ぶ上司崇拝は、あくまで「組織の言語」。内心の是非は問われない。むしろ戸惑いを顔に出す方がリスクだ。洗礼式と十か条を完遂したとき、あなたは“信者”から“使徒”へ昇格し、次のステージ――部下を従える側――への扉が開く。だが、その扉の向こうに何が待っているかは、まだ誰も教えてくれない。